桐たんす修理工程
桐たんす修理工程
お客様からお預かりをした桐たんすは、修理や再生をする場合、まずは金具を外して外部と内部を熱湯にて洗浄をして、その後乾燥させます。
これは、桐材が汚れたまま修理や再生を進めても、長期的な劣化を招く恐れがあるためです。
また、熱湯で洗うことにで殺菌作用もあります。
その後に修理作業を進めていきます。
金具外し
修理をする桐たんすは、まず最初に取り付けてある金具外しから始めます。
桐たんすの修理は、何十年と経過している桐たんすが多いですので、金具が内部でサビ付いている事が多く、ほとんどの桐たんすの金具は外すのに時間が掛かることが多いです。
洗い
お湯を沸かし熱湯で、桐たんすの外部と内部を専用のブラシと研磨剤を使用して洗います。
表面の塗装と長年の汚れを洗い落とします。
そして外部だけではなく内部も洗います。
内部もホコリを取り除くために専用の研磨剤を使って洗浄します。
当社では、桐たんす修理リメイクの際に、お客様よりお預かりをさせていただいたタンスの金具を外した後に、外部と内部を洗います。
その後、乾燥させてから修理や再生作業をいたします。
桐たんす業者により、作業工程で桐タンスの外部と内部を洗う業者と洗わない業者があります
この時点で修理価格に開きが出ます
お客様より、桐たんす修理、再生のご依頼を頂く桐タンスは、ほとんどが何十年と使用したタンスが多く、外部には「大・小のキズ」・「ホコリ」・「汚れ」が付着し、内部も「ホコリ」がたまっています。
桐の木は水に濡らすことにより膨らむ性質があります。
キズを浮かせる事により、表面をカンナで削る量を最小限にいたします。
多くの業者さんでは、洗わずに機械で大量に削ります。
そのため、通常は2回・3回と削れるタンスも二度と削り直しが出来なくなるという事があります。
当社では、手間は掛かりますが、お客様よりお預かりした桐タンスを洗い、外部・内部とも綺麗にしてから修理・再生をし、お客様の元へお届けをさせていただいております。
修理方法
破損の酷い部分や、虫穴の酷い部分は、桐の木を埋めて修理をしていきます。
緩みのある箇所は、ハタガネ(日本古来の木工締め具)を使い修理をしていきます。
引き出し外部の修理
鉋で削りきれないキズの深い所は、桐材を埋めて平らにします。
虫穴がポツポツとある場合は、状況によりますが、部分的に取り除きをして材料を張り替えます。
下の映像は、取り除きをした直後の内部の虫喰い後です。
引き出し内部の修理
割れている引出しや衣裳盆の内部は、桐材を埋めて修理をします。
扉の修理
キズの大きい所や深い場所は、桐材を埋めます。
このように、長年の間に木が乾燥して割れている箇所がある場合が多いですので、割れて隙間の開いている場所に桐材を埋めて修理をしていきます。
また、破損している箇所の補修や、キズの修理もしていきます。
桐たんす本体の修理
割れや、深いぶつけ傷は、削っただけでは直りませんので、新しい桐材を埋めて修理をしていきます。
虫穴、または破損状況が悪い場合は、前面柾板の張替え修理をいたします。
背板部分の修理後です。
木工用ボンドを使用して割れて隙間のある間隔のサイズに桐材を加工後、埋め込んで修理します。
上記の映像より状態が悪い場合は、背板を新しい桐材にて全張替えになります (料金が別途掛かります)
背板部分を全張替え後の映像です。
側面は、洗った後に削り終わった状態です。
台輪について
桐たんす本体の一番下に台輪という台が付いております。
引越しで紛失してしまったり、又は虫喰いや傷みの多い場所になります。
拝見をさせていただき、破損状況により新たに製作をしなければならない場合は、別途に製作費が掛かります。
木釘を使って修理しています
木釘は錆びなく、木の収縮に対応しますので、昔から桐たんすをはじめ、高級家具に使われています。
お預かりした桐たんすの再生に通常は200~300本使い修理をしていきます。
削りについて
破損している場所の修理をした桐たんすを鉋で前面、側面を始め全体を削ります。
削る事により小さなキズが消えて、タンス本体の反りや歪みを調整していきます。
前面の引出しと扉は、通常2mmから5mm厚みの柾板(杢目の綺麗な部分)を張り合わせておりますので、薄くなってしまわないように当社では出来るだけ最小限の削り作業で修理をしております。
塗装
修理、削り作業の後はタンスの塗装に入ります。
昔から基本的に、桐たんすの塗装は、トノコ仕上げ又は、時代仕上げになります。
お好みにより選択してください。
現物の箪笥を見させていただいた上でアドバイスをさせて頂きますが、桐たんすの破損等の状態により、時代仕上げしか出来ない等の場合もございます。
砥の粉仕上げの塗装工程
昔から一番多い桐タンスの仕上げ方法です。
最初に、うずくり加工をいたします。
桐タンスのうずくりは、かやの根を束ねて筒状にしたものです。
前面や側面の塗装する部分にうずくりを掛けて、木目の柔らかい部分を削って固い部分を残しそれにより、塗装後に綺麗な木目が浮かびます。
衣裳タンスは、扉の内側と衣裳盆と小引出しにも、うずくりを掛けてます。
砥の粉は、岩石を砕いて粉末にしたものです。
以前は、砥の粉とヤシャの実を煮だした煮汁を混ぜて塗っておりましたが、ヤシャの煮汁がカビの発生に係ることから、現在はヤマト液という桐タンス専用の液体と砥の粉を混ぜて塗装をします。
タンスの前面は、本体、引出し、扉ともに3回塗りします
側面は2回塗りをします
桐たんす業者により、前面と側面を1回塗りで終わる業者もあります
この時点で修理価格に開きが出ます
正面、側面、天板の1回目塗りを特注で作っていただいている刷毛を使って塗ります。
扇風機を回して乾かしますが、気温や湿度によってストーブを使用します。
側面の2回目塗りをする前に再び、うずくりを掛けて余分な砥の粉を落とします。
側面2回目の塗りの乾かし中です。
前面と側面の2回目塗りが乾いた後は、前面の3回塗りをする前に、うずくりを掛けて、余分な砥の粉を落とします。
前面の3回目塗りをします。
前面3回目塗り後の乾かし中です。
塗装が乾いたら、グリランという桐タンス専用の簡易的防水を塗ります。
桐タンスは呼吸をしていますので、呼吸を妨げない様に完全防水はいたしません。
下の映像は桐たんす専用の磨きロウです。
桐タンス専用の磨きロウを手で転がすように塗装をした全ての部分に磨いていきます。
磨きが終わった後は、金具を取り付けていきます。
時代仕上げの塗装工程
写真の桐たんすは、傷、割れ、の修理と削りが終わった箪笥です。
これから時代仕上げの塗装に入ります。
時代仕上げは、最初にバーナーにて表面を焼いていきます。
箪笥の表面を焼いた後です(焦がした状態です)
焼いたので、手で触ると真っ黒の煤が付きます。
この後、ブラシでこすって、触っても黒い煤が付かないようにします。
こすって、煤を落とした後の状態です。
こすり終わった後に、トノコを塗っていきます。
塗装中の映像は、時代仕上げのグレーです。
時代仕上げの塗装が乾いた状態です。
表面の余分な砥の粉を擦って落とします。
この作業により桐の木目が綺麗に出ます。
桐タンス専用の簡易防水を刷毛で塗ります。
桐タンスは呼吸をしていますので完全防水はしませんが、砥の粉仕上げより、時代仕上げの方が防水加工を強くして出来る為、砥の粉仕上げよりは、はっ水効果があります。
桐タンス専用の磨きロウを手で転がすように磨いていきます。
下の映像は桐たんす専用の磨きロウです。
金具付け
60年前、70年前の桐箪笥ですと最初の修理工程で金具を外す時点で、経年劣化にて壊れる事が多くあります。
その為、古い桐たんすは新しい金具に付け替える事が基本になりますが、桐たんすにより新しい金具が無い箇所や新しい金具だと不適格な箇所は当社にて古い金具を修理、再塗装して使用させていただきます。
修理作業から塗装、金具付けまで、衣裳盆や引出しを抜いた状態で作業をします
その為、内部にホコリが入りますので、ホコリを最後に絞った雑巾にて拭き掃除をします。
桐たんすに虫穴が有る場合は、リフォーム、再生が出来ない場合があります
桐たんすの現物を拝見させていただいて、修理が可能か判断をさせていただきます。
桐たんすの修理内容の品質によって価格に差が生じます。
修理の複雑さや桐タンスの状態によって、作業の難易度と手間も変わります。
修理や再生作業には、技術や知識も必要であり、作業技術によっても価格に開きが出ます。
修理業者を選ぶ際には、価格だけではなく修理の品質や信頼性も考慮に入れ、評判や実績等も比較し検討することも重要です。
桐たんす修理とリメイクについて